シロアリを見たことがありますか。よく目にするシロアリは、梅雨時期の蒸し暑い日の夜、家に飛んでくる羽のついたシロアリ(羽アリ)ではないでしょうか。
シロアリから大切な家を守りたいけど、どうしたらいいの?ホームセンターで売ってる殺虫スプレーで駆除できるの?
そんな悩みに、シロアリ点検業務経験者がお答えします。
シロアリってどんな生きもの?
シロアリは、ゴキブリの仲間
シロアリの見た目はクロアリに似ていますが、生物学上ではゴキブリの仲間です。
シロアリは、家屋に被害を与える害虫として知られていますが、枯れた木などを分解したり、他の生きものに捕食されたりする益虫の側面も持っています。
日本にいる約22種類のシロアリの中で家屋に被害を及ぼすのは、「地下シロアリ」と呼ばれる次の2種類です。
- ヤマトシロアリ → 北海道を除く日本全土に生息。乾燥に弱く、水を運ぶ能力も低いため湿った木材で生息したりする。羽アリは、4月~5月にかけての日中(午前10~12時頃)に群飛する。
- イエシロアリ → 関東付近を北限とした本州南岸の温暖な地域に生息。家の気密性、暖房性能の向上に伴い、関東よりも北で生息したりする。水を運ぶ能力が高いので、乾燥した建物全体に加害することもある1つのコロニー(集団)のシロアリ個体数は、100万頭を超えることが多い。羽アリは、5月~7月頃の蒸し暑い日の夕方から夜にかけて群飛する。
シロアリは、社会性昆虫
シロアリのコロニー(集団)には、階級があり、その中で分業制が行われている社会性昆虫です。社会性昆虫には、ミツバチやアリもいます。
コロニー内で個体数が最も多いのが「職アリ」と呼ばれる階級のシロアリです。コロニー内の90〜95%は職アリが占めています。
職アリは、卵や幼虫の世話、巣や蟻道(ぎどう)を作ったりするなどの役割とともに、エサを取りに行くことのできる唯一の階級です。また、職アリは一生を通じて脱皮を繰り返す特徴があります。
シロアリのコミュニケーション
シロアリは巣の中でひとつの社会を形成し分業制を維持するために、フェロモンを利用して次のようなコミュニケーションをとります。
- 警報フェロモン → クロアリなどの外敵から攻撃されたシロアリは、警報フェロモンを分泌し、仲間に危険を知らせます。
- 道しるべフェロモン → エサを見つけたシロアリは、巣に戻る道中、道しるべフェロモンをつけることで、仲間にエサを食べさせるための情報を与えます。
シロアリの家屋への侵入方法
シロアリは、乾燥や日光に弱く、外気との接触を嫌います。そのため蟻道(ぎどう)と呼ばれるトンネルを作ることで外気と接触することなく、基礎コンクリートや床下の束石などをつたって地中から建物に侵入することができます。
蟻道には、捕食者であるクロアリやクモなどから身を隠す役割もあります。
シロアリ対策をするには、どうしたらいいの?(業者への依頼)
シロアリ対策には、主に床下などに薬剤を散布するバリア工法と薬剤を入れた筒を埋設するベイト工法があります。
【バリア工法(薬剤散布)】
長所 → 薬剤に触れたシロアリは死んでしまう(即効性がある)
短所 → シロアリの巣は根絶されない。健康被害(化学物質過敏症など)が出る場合がある。
【ベイト工法】
長所 → シロアリの巣が根絶される。脱皮しない生きものに対しての安全性が高い。
短所 → シロアリの脱皮のタイミングで徐々に効果が表れるので、即効性がない。バリア工法よりも高価。
シロアリ対策を自分で出来るの?
結論から言うと、シロアリ対策を自分で完全にすることはできません。
シロアリを見つけたら、「一秒でも早く駆除したい」「殺虫スプレーを使って駆除しよう」、そんな気持ちになると思います。
ゴキブリ用殺虫スプレーを想像すると分かりやすいのですが、殺虫スプレーは目の前の害虫を簡単に駆除することができるからです。しかし、シロアリが発生した場所に殺虫スプレーを使っても、すべてのシロアリを駆除することはできません。殺虫スプレーの範囲は局所的で、その場所以外にもたくさんのシロアリがいるからです。
さらに、殺虫スプレーの成分で危険を察知したシロアリは、警報フェロモンを出すことで他の場所へと移動してしまい、家屋の被害をさらに拡大させてしまう可能性があります。
最近では、ベイト工法の薬剤も市販されています。
被害があった場所や予防したい場所に設置するようですが、しっかりとした効果を得るのに局所的な設置では不十分です。効果が期待できる使い方としては、シロアリの活動がある蟻道(ぎどう)に直接取り付けるぐらいではないでしょうか。それでも、長期的なシロアリ対策としては不十分と言えると思います。
まとめ
今回は、シロアリの習性や対策について紹介しましたが、いかがだったでしょうか。
ホームセンターで売っているシロアリ殺虫スプレーは、応急処置としては使えますが、根本的な解決や長期的なシロアリ対策には向いていません。あまり目にすることのないシロアリですが、気付いた時にはかなりの被害に遭っている場合もあります。大切な家屋を守るためにも、しっかりとしたシロアリ対策をしましょう。
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