紙巻きタバコの及ぼす健康被害の関心が高まったことにより、注目されるようになった電子タバコ。
日本だけでなく、世界中で販売されています。紙巻きタバコより安心して吸うことが出来るタバコ、と思われている方も多いのではないでしょうか。
本当に全く害はないのか。
紙巻きタバコとの違いはどこか。電子タバコについて、メリット・デメリットをそれぞれ詳しくご紹介していきます。
電子タバコ(VAPE)とは
そもそも電子タバコとは、どういったものでしょうか。
最近になって新しく販売された、「新型タバコ」と呼ばれる種類の1つです。
紙巻きタバコのようにタバコの葉を使わず、香りの付いた液体(リキッド)を電気で加熱し、発生した水蒸気を吸引する嗜好品です。
VAPE(ベイプ)やベイポライザー等、と呼ばれることもあります。
タバコの葉を使用していないのでニコチンやタールが入っておらず、タバコ事業法上のタバコ製品には当たりません。
ニコチン入りのリキッドも存在しますが、日本では医薬品医療機器等法(薬機法)により規制が掛かっています。
なので、日本国内ではニコチンが含まれるリキッドは販売されていません。
ですが、ネット販売を通じて海外からの輸入によって、ニコチン入りリキッドを購入する方もいるようです。
様々なフレーバーを味わう事が出来、ニコチンやタールが含まれないことから欧米を始め、世界中で注目が集まっています。
電子タバコのメリット
普通の紙巻きタバコと比べると様々なメリットがあります。ここでは電子タバコによって得られるメリットをご説明していきます。
・紙巻きタバコより少ない不快感
先ほども述べたように、電子タバコには紙巻きタバコのような有害性物質が含まれていません。主にタールとニコチンです。
電子タバコのリキッドにはタバコの葉が含まれていないので、基本的には紙巻きタバコのような匂いを感じることはありません。
なので、タールによる歯の黄ばみや部屋が汚れるといった心配もありません。またニコチンによる歯周病のリスク、口臭の問題を減らすことができます。
そして、ニコチン依存からの卒業に効果的だという声もあります。
・豊富な種類のリキッド
電子タバコのフレーバーは多くの種類があり、様々な味を楽しむことが出来ます。
例えばフルーツ系のフレーバーだとメロンやオレンジ、ドリンク系だとカクテルやお茶等、多種多様な味を選べるのが醍醐味と言えるでしょう。
また、色々なリキッドを調合して、オリジナルの味を作ることも可能です。ただしこういったリキッドは、安全性のある場所で購入するようにしましょう。
信頼できるメーカーの品ならば、何も問題ありません。が、正規品に似せた偽物や粗悪品も存在します。
自身の安全のためにも、信用できるお店等で手に入れるようにしましょう。
・コストパフォーマンス
電子タバコは、初期費用等が高いという欠点があります。
けれど、長期間購入し続けるのであれば、紙巻きタバコに比べてとても経済的で、コストパフォーマンスに優れています。
紙巻きタバコの場合、1日に1箱消費すると考えたら月に軽く1万円を超える費用になります。
ですが電子タバコの場合、リキッド15mlで2~3週間消費するのが目安なので、月に1000~2000円程が費用になります。
こういった理由から、電子タバコに乗り換える人も少なくありません。
また吸い殻や灰の処分をする手間がなく、途中で喫煙を止めることが出来る利便性の良さも魅力な点です。
電子タバコのデメリット
ここまで電子タバコのメリットをご紹介してきましたが、ここからはデメリットと捉えられる部分をご紹介していきます。
・メンテナンスが面倒
電子タバコは、定期的なメンテナンスが必要になります。主にリキッドの補充やアトマイザー洗浄、コイル交換といったものです。
アトマイザー洗浄は週に1回、コイル交換は2~3週間に1回程度行うようにします。
メンテナンスを怠ると、苦みの原因になり味が悪くなったり、本体の故障の原因になる可能性もあります。
電子タバコ本体に興味が無い人にとっては、面倒に感じる点でしょう。
・リキッドの問題
電子タバコのリキッドは、体に影響を及ぼすことのない成分で出来ており、問題は無いと言われていますが本当にそうでしょうか。
そういった疑問を、裏付ける実験や報告があります。日本よりも電子タバコが普及しており、30代以下の若年層が多く吸っているアメリカ。
ここで若者を中心に、原因不明の呼吸器疾患の症例が急増しているそうです。
分かっているのは、ウイルスによる感染ではないのに呼吸困難や息切れ、胸の痛みなどがあり、共通して全員が電子タバコを吸っていることです。
なぜこういったことが起こっているのか。
アメリカの研究チームが出した報告から、鍵を握っているのは電子タバコに使われているリキッドにある可能性が浮上しました。
実験で、マウスに電子タバコの蒸気を吸引させたところ、肺の免疫系に異常が見られたそうです。
肺の脂質層を傷つけ細胞が変質し、機能不全を起こしてしまったとされています。
リキッドの問題は、これだけではありません。
上記でも申しましたように、リキッドは体に悪影響を及ぼすものではないと言われていますが、その理由は使用されている成分が食品添加物や医薬品としても使われている物だからです。
主成分は「プロピレングリコール」と「植物性グリセリン」で、どちらも安全性のある物とされています。
しかし、これらの物質を加熱し、蒸気として肺に吸引した際の安全性は別です。
リキッドの主成分が過熱することにより、化学変化が発生し有害物質になる可能性があるのです。
また加熱温度を高く出来る一部の電子タバコから、ホルムアルデヒドやアセトアルデヒドといった、発がん性物質が発生しているという報告もあります。
・アメリカ疾病予防管理センターの警鐘
アメリカ疾病予防管理センター(CDC)は、電子タバコによって引き起こされる呼吸器疾患を「EVALI」と呼び警鐘を鳴らしています。
過敏性肺臓炎やリポイド肺炎、巨細胞性間質性肺炎等の事例があります。
アメリカで販売されている電子タバコのリキッドには、ニコチンはもちろん多くの化学物質が含まれています。
ほとんどのケースでテトラヒドロカンナビノールと呼ばれる、大麻に関連した成分が入ったリキッドを使用していることが分かっています。
では違法薬物を含まないリキッドなら安心か、と言うとそうでも無いようです。
それは薬物を含まないリキッドを吸った人から、肺炎が確認されたからです。電子タバコとの因果関係はまだはっきりしておらず、これからさらに詳しい調査結果が出てくることでしょう。
CDCは、電子タバコの使用を控えるように警鐘を鳴らしています。
ちなみに日本では、信頼できるメーカーから購入した物や、検査済みの物であれば問題ありません。
けれど海外から輸入された粗悪品が、一部で流通している可能性もある為、注意した方が良いでしょう。
・その他
蒸気で挙げた以外にも、電子タバコに対する意見があります。
例えば電子タバコは禁煙の成功率が高いと謳われていますが、それに対して疑問の声もあります。
紙巻きタバコを吸う時と同じ挙動をする為、喫煙の習慣が抜けきらないのではないか、むしろ禁煙の邪魔になってないかというものです。
さらには非喫煙者や禁煙者に、喫煙を誘導することになるではという懸念もあります。
違法薬物である大麻や覚醒剤が入った安全性の不十分なリキッドが、流通する可能性があります。
そしてデバイス自体を、違法薬物の吸引器として使用することも考えられます。
また、海外では電子タバコのバッテリーが、爆発する事故が起きています。幸い日本の機種は、爆発するようなことがない安全な物で作られています。
しかし、安全基盤の入っていない機種も国内で出回っているそうなので、注意しましょう。
まとめ
電子タバコの広告には、紙巻きタバコと比べてメリットが多いイメージを持たせるものが多くあります。
タールが含まれていないから嫌な匂いもしない、長期的に見ればコストパフォーマンスが良い、ニコチンもないから健康的といったものです。
しかしこれらの謳い文句に疑問を挟む余地があるのも事実です。
「EVALI」は本当に電子タバコが原因なのか?他に要因となる物はあるのか?等これからの研究が待たれる議題です。
電子タバコの安全性はメーカーが謳っているだけで、完全に証明されている訳ではありません。
それでも電子タバコを吸うのか吸わないのか、メリット・デメリット両方を理解した上で考えて下さい。
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